作家、演出家、前川知大の鈍ら(ナマクラ)な日々。時々切れ味の良い日も。かなり不定期更新。
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前川知大          (まえかわともひろ)

  • Author:前川知大          (まえかわともひろ)
  • 海の生き物とキノコと豆、乾物が好きです。F1と料理が好きです。UMAや地獄の関係者も好きです。漬物だけは勘弁してください。
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2007.12.17 Mon
新しいケータイの便利機能と今後の展望
suikaka.jpg

ちょっとした事情で、ケータイをsoftbankからdocomoに変え、機種も新しくなった。
以前からモバイルSuicaや電子マネーは使いたかったので、さっそく契約、設定する。
電子マネーでは、カードについたEdyを持っていたのだが、
結局財布を出すので現金を使ってしまい、自分には定着しなかった。
半年くらい前、初めてSuicaを持ち、改札越えの快適さに私はほんの少し電車が好きになった。
そんな経緯のある私にとって、Suicaと電子マネーをケータイでまかなえるのは
かなり魅力的なサービスに思えた。ケータイならいつも取り出しやすいポケットに入れているので、
ちょっとした外出なら鞄の奥深くから財布を引っ張り出す必要はなくなる。

契約して三日、自宅で日すがら机に向かっている私にとって、
残念なことにその機能を使う機会が無い。
使いたい。とても使いたい。
あまりに強いその欲求にそわそわして集中力を失った私は、
あてもなくお出かけすることにした。
自転車で10分かからない新宿まで、あえて電車で行くぜ。
しかも大江戸線でまず飯田橋まで離れ、JRに乗り換え新宿まで行く。
30分弱かかるが、いかなる改札も私を止めることが出来ないことを証明するためには
これくらい食らわせる必要がある。
なんなら実家の新潟までケータイ一つで帰ってやろうかとも思ったが、
今回は勘弁してやろう。

マフラーを巻き、鞄を肩にかけたところで私はふと思った。
ここで財布を持っていくのは、いかがなものだろうか。
強気なもう一人の私がささやく。
「ヒヨってんじゃねーよ。現金いらねぇべ(ヤンキー風)」
もしケータイがうまく機能しなかった場合のために、
現金を持っていくのだとしたら、お前はとんでもない腰抜けだ。
と彼は言う。
確かにそうだ。やるならば退路は絶つべきだろう。背水の陣である。
身軽に、手ぶらになってこその便利機能であるはずだ。
これは私を解放するツールであるはずなのだ。
どうせならビキニパンツ一丁でケータイを首にぶら下げ出かけるべきである。
しかし季節が季節なので今回は勘弁してもらおう。
何らかの設定ミスにより、改札が開かなかったケースを考慮し、
壁の前でイメージトレーニングを繰り返す。
動揺してはいけない。ごく自然に、チャージが足りなかったのかな、という態度を取るのだ。
「いつものことさ」
そうアメリカ人のように肩をすくめてみせようじゃないか。
「大丈夫、アムロならできるわ」
とセーラさんの声が聞こえたので、私はケータイを握りしめて部屋を出た。

昼下がりの大江戸線改札は、意外なほど混んでいた。
こんなところに小さな背水の陣を敷いた男がいるとは誰も気付くまい。
いや、気付かれても困る。
もし改札が開かなかったら、私はそそくさと家に帰るしかない。
暗い部屋の中、呪いの言葉を吐きつつケータイを万力でぺしゃんこにし、
私も便器に顔を突っ込み大レバーを引きまくることになるだろう。
くそったれが。
タイミングよく女子中学生の大群が来たので、私はその流れに紛れ込んだ。
その流れは否応なしに私を改札まで運んでくれるだろう。
それでいい、敵前逃亡は銃殺である。
私の息が荒いのは、キミ達に興奮しているわけではないことを分かってほしい。
ケータイの表裏を確認し、改札の読み取り部と平行になるようポジショニングする。
コンベアが運ぶ工業製品のように女子中学生は改札を通り過ぎて行き、ついに私の番が来た。
ピッ!という音とともに、私は流れを止めることなく改札を通過した。
「yes!」
しまった、思わずアメリカ人みたいな声が出ちまったじゃないか。
目の前の女子中学生が振り返り私を見る。
たぶん私はその時、ひとり笑っていたと思う。
ちがう、ちがうんだ。そんな目で大人を見るんじゃない。

電車のシートに座った私は、さっそくケータイを開きチャージを確認する。
しかしまだ下りていないのだから残額が減っているはずはない。
焦りすぎだ。嬉しがり屋にもほどがある。落ち着け私。
それからというもの、私を止めるものは何もなかった。
常勝である。常勝軍団である。(私はもはや独りではないのだ)
改札などという単語は、私の辞書にはもう載っていない。
新宿に降り立った私は、勝利の雄叫びを上げたいところだったが、
やめておいた。それくらいの常識はある。

駅構内を歩いていると、Suicaのマークを掲げたハンバーガー屋が目に入った。
やってやる。
特に腹は減ってないが、やってやる。
カードSuicaの時は電子マネーとして使う気はしなかったが、今は違う。
チャージは無限なのだ。
(と言っても後で請求に怯えるかもしれないが。まぁ所詮はハンバーガーである)
BLTサンドとコーヒーを注文する。
しかしここで、私はダセェことをやってしまった。
イメージトレーニング不足だった。
サラリとケータイをかざせばよかったのに、
私はあるはずのない財布を探す仕草をしてしまったのだ。
その上、「あ、これでいいや」的なことをボソリと言い、ケータイを出したのだ。
誰に対して言ってやがんだそのセリフ!死ねオレ。
ケータイで会計を済ますことに若干の照れがあった。
認めよう。慣れてねえ。
自動改札と人間の店員は違う。
私のクソのような自意識が、私の身体に不必要な演技を生み出した。
「現金?なにそれ」と、生まれた時から全ての会計をケータイで済ませてきたかのように、
そんなふうにスマートに会計をしたかったのに。
「Fuck」
カウンターで店員からコーヒーを受け取りながらつぶやいた。
ちがう、キミに言ってるわけじゃない。

テーブルの上で、コーヒーカップと並んだ相棒のケータイは
「がっかりだよ」と肩を落とした。
信用してないわけじゃないし、決して「これでいいや」的なサブのポジションのつもりはない。
今日の主役はお前だった。
私は紙ナプキンの上に彼を座らせ、謝罪した。
「悪かった。実際アイツ(財布)にはウンザリなんだ。これからはお前でいこうと思ってる」
返事をするかのように液晶ディスプレイの中で、デジタル時計が16:00ピッタリに変わる。
その時BLTサンドを持った店員が「失礼しまーす」と卓上のケータイをグイとどけた。
「さわんじゃねえ!」
と怒鳴ろうとしたが、やめておいた。それくらいの常識はある。
出来立てのBLTサンドのパンはガリガリで、私の口内の粘膜をズタズタにした。
敗北だ。

結局私は新宿の街に出ることはなく、そのまま電車に乗って家に戻った。
まだ街に出るのは早かった。イメージトレーニングのやり直しだ。
まずは会計時の動きをスムースにするために、素振りをやろうと思う。




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Comment
Posted by 図
悲しいけどこれ戦争なのよねー!
2007.12.18 Tue 19:08 URL [ Edit ]
Posted by 2D
電子マネーデビューおめでとう。
私も今月からモバイルSuicaとEdyモバイルを操るサイバー野郎に変身しました。
もっとも、「電子マネー購入→マイル還元」という
強固なモチベーションに拠るところが大きいのですが。

先日もあらゆる固定費をマイルに還元しようするあまり、
娘の保育費をそれに当てようと思い立って運営会社に乗り込みましたが一蹴される始末。
今やマイルのために家庭を犠牲にする男です。
その甲斐あってか、韓国2往復分貯まりましたよ。

君もぜひどうかね。
タイでフィーバーしようぜ。
2007.12.20 Thu 22:55 URL [ Edit ]

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