作家、演出家、前川知大の鈍ら(ナマクラ)な日々。時々切れ味の良い日も。かなり不定期更新。
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前川知大仕事状況
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[小説] 「散歩する侵略者」 メディアファクトリーより発売中 [連載] ■週刊モーニング(不定期連載) 「リヴィングストン」 漫画:片岡人生 原作:前川知大
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前川知大          (まえかわともひろ)

  • Author:前川知大          (まえかわともひろ)
  • 海の生き物とキノコと豆、乾物が好きです。F1と料理が好きです。UMAや地獄の関係者も好きです。漬物だけは勘弁してください。
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2008.05.05 Mon
遊びじゃないのよGW
私の仕事部屋には窓がない。
じっと篭ってPCに向かう日々が続くと、
自分が足元からコケに覆われた密林の石像ような、そんな風に思えてくる。
まさに石像のように、ぴくりとも動けず、一文字も作業が進まない時は特に。
坊主頭の天辺に、きのこが生えてきそうだ。
心象風景がいい感じにナウシカの腐海化してきたので、
すいません、実家に帰らせていただきます。

と思いつき、一時間後にはゴールデンウイークでごった返すミドリの窓口の行列へ軽やかに横入り。
するもババアの苦情に当然ペナルティ、最後尾からの追い上げにかける。
「一番速い新幹線を用意しろ」。速度は同じと言われたので、一番早い新幹線で我慢する。

ホームにて母へ電話。
「突然だが帰る。数時間後には貴様の眼前に存在するから気をつけろ」
「飯はどうする?」
母はいつもメシのことばかり考えている。
「肉と魚、どっちがいい? 酒は用意するか?」
「任せる。酒はいらん。遊びに帰るのではない」
私は実家の空き部屋で集中して仕事がしたいのだ。
「野菜は?」
知るか。好きにしろ。
「お前が帰ってくるという情報を公にして良いか?」
「駄目だ。隠密である」
母の情報網を侮ってはならない。
釘を刺しておかないと、親戚や近所のおばさん、私の同級生まで呼び、
絶頂宴会へなだれ込んでしまう。
ゴールデンウィークだが、今回は避けなくてはならない。
「もう一度言う、駄目だ」
「ふーん・・・」
不満そうだ。怖いなぁ。

キャリーケースの車輪をドリフトさせながら間違いの無い乗り継ぎで実家に到着。
ん?にぎやかな団らんの声がする。
妹夫婦が0歳児(私の姪っ子)を連れて帰省中!ガッデム!聞いてねえ。
いや、GWだ、予想は出来たはず。悪いのは私だ。
「明日の朝に発ちますので、ゆっくりお仕事してください」
という義弟。良く出来た男である。
子供にトラウマ作ってやろうか、と一瞬でも考えた自分を大いに反省だ。

かつて7人家族だったその家に住むのは母一人、田舎の家は無駄に広く、部屋は腐るほど余っている。
仏間と客間をつなげた16畳を仕事場にカスタマイズ。
といってもノートPCと座椅子を置いただけだ。
がらんとしたその部屋は風通しもよく、障子戸を開けると庭がよく見える。
花水木のピンクの花が風に揺れている。
ウム。環境を変えたのは正解だ。筆も進むだろう。(おおむね錯覚であるが)

妹夫婦が晩御飯の買い物に行くというので、その間姪っ子をみていることに。
恐ろしいので、ただ見ていた。正座して、ただ、黙視である。
赤ん坊には未知の能力が隠されているので、
私の意志を直接彼女の脳に送り込めるはずと、必死に念を送る。
→泣いた。
コミュニケーションの成立である。

しかし、泣き止まないのでうろたえる。
恐る恐る抱っこすると、泣き止んだ。
自然に笑みがこぼれた自分に気付き、
姪っ子にコントロールされているのでは、と思ったが、それもまた良し。
不動の動たる赤子の絶対権力にしばし服従。
人前で赤子をあやすなど、絶対に出来ない私だが、
二人きりだと意外な実力を発揮した。あやすあやす。
母が来たので恥ずかしくなり、姪っ子を床に置き
「意外と重い」などとどうでもいいコメントで自意識をごまかす。
中学生か俺は。

さて、晩飯はというと、結果的に酒盛りになったが、まぁ良しとしよう。
地元の魚に舌鼓を打つ。
約一週間は打ち合わせも無いので、実家で集中して作業が出来るはずだ。
食後は一応資料に目を通し、荷物の整理。
メガネを忘れたことに気付く。何てことだ。
すぐに家人に電話し送ってもらうことにした。
コンタクトをはずしたら何も見えないので、寝ることにする。
初日は移動で終わってしまった。明日から頑張ろう。

翌日、メガネを届けに来た宅配便の男が、前川家の玄関で言う。
「おお、帰って来てたんだ」
私の仲の良い同級生だった。
さすが地元、どう頑張っても隠密とはいかない。
彼は夜再び現れ、ホタルイカの沖漬をもってきてくれた。
自分で獲ったホタルイカをその場で醤油などの調味液に漬け込んだ新鮮なものだ。
いやに美味い。
夜テトラポッドの下にライトを当てると、海面にホタルイカがわらわらと集まって来るのだという。
それをタモ網でひょいひょいとすくい、液に投げ込む。
イカは液を海水と同じように吸い込み、全身にくまなく味が染み渡る。
「簡単に獲れるよ」
いいなぁ、そういうの。つくづく思う。

しんとした家で、PCに向かう。
時々母が様子を見に来る。
「何してるの?」
「仕事」
「へぇ」
「お茶する?」
「いや、いま途中だから」
「ふーん。・・・で、何してるの?」
「仕事だって」
母は、どうも私が何をして(食って)いるのかぴんと来ていないふしがある。
どこか遊びの延長のように思っているのかもしれない。

しばらくして、私はこった肩を揉み解し、立ち上がって伸びる。
縁側に立ち、庭の緑で目を休める。むー。
母が来た。
「ちゃんとやってる?」
「やってるよ」
「ご飯食べる?」
「今いらない」
「へぇ・・・」(母すごすごと帰る)

なんだこれ。あ、分かった。
中学生の時といっしょだ。時々部屋を見に来ては、
勉強してる?お茶いる?また寝てる!終わったの?
母にしたら同じようなものなんだろう。
でも母よ。別に私は宿題をやってるわけじゃなくて、
自発的にやってる仕事なんです。
嫌々そうに見えるのは、アイデアが出なくて苦悩してるんです。
だからどうか、私に大量のご飯を食べさせるのはやめてください、
私は食べ盛りの中学生じゃないし、満腹になると眠くなって仕事にならんのです。

その日の夜、私はアイデアが出ず悶々としていた。
室内をうろうろしたり、タバコをふかしたり。
時刻はもう0時を回っていた。
くそう!うまく考えがまとまらない。
うーん、と、座布団に頭を埋め、土下座するような、
陸上のクラウチングスタートのような、そんな格好で考え込んでいた。
すると障子戸がサクッと開いて、母が言った。

「遊んでんなら寝なさい!何やってんの」

だ、か、ら、仕事してんだっつーの!




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