作家、演出家、前川知大の鈍ら(ナマクラ)な日々。時々切れ味の良い日も。かなり不定期更新。
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[小説] 「散歩する侵略者」 メディアファクトリーより発売中 [連載] ■週刊モーニング(不定期連載) 「リヴィングストン」 漫画:片岡人生 原作:前川知大
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前川知大          (まえかわともひろ)

  • Author:前川知大          (まえかわともひろ)
  • 海の生き物とキノコと豆、乾物が好きです。F1と料理が好きです。UMAや地獄の関係者も好きです。漬物だけは勘弁してください。
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2011.11.20 Sun
もう頬づえはつかない
右耳の下あたりあった鈍痛が日々大きくなって、頭痛はするし咀嚼すると響くし、困ったもだと思っていたら顎関節症の疑い。
なんだそれ、と思いつつ病院に行くと顎関節症だった。
噛み合わせ、歯ぎしり、片方だけでよく噛む、頬杖、うつ伏せ寝、猫背、殴られた等々、医師は考えられる原因を列挙するも、私は「心当たり無し」と言う。
「無意識にやっているものだ。それに寝てる間は分からんだろう。ストレスで歯ぎしり等あり得る」

帰って家人に聞いてみる。
「寝てる間の私の具合はどうかね。歯ぎしり等しているかね?」
「していない」
「うつ伏せは?」
「していない」
「寝ている間に私を殴ったりしていないかね?」
「していない」

一週間薬で様子をみて、治らんようならマウスピースを装着せよ。
本番中で色んな人に会うのにそれは困る。
マウスピースを装着した演出家はいやだ。
悪化しないよう、なるべく右顎に負荷がかからないよう、食事の時も気をつける。お酒も控え目に。
原因が分からないまま、顎を気にしつつ暮らしていると数日後、家人が机に向かう私を見て叫んだ。
「それだ!」
ビクッとした私は、左手で頬杖をしてパソコンの画面をにらんでいた。

頬杖。確かにしていた。が、たまたまだろう。
「いや、貴様のその姿勢は見覚えがある」と家人。
「私が無意識に頬杖を付いていると?」
そのような癖は無いと、医師にも否定した私だったが、段々自信がなくなってくる。
確かにこうしてパソコン見てるかも。

それからほぼ毎日、机に向かっていると家人の号令のような声が背中に突き刺さった。
「頬杖!」
ひっ! うわぁ、またやってた。

一週間経ち、先日再び病院に行った。
「生活態度を見直したところ、残念ながら私に頬杖をつく癖があることを、認めざるをえないようです」
「人間は無意識に支配されているのだよ」
と医師は恐ろしい拘束具(マウスピース)を取り出したので、私は診察室から逃げ出した。




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