作家、演出家、前川知大の鈍ら(ナマクラ)な日々。時々切れ味の良い日も。かなり不定期更新。
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前川知大          (まえかわともひろ)

  • Author:前川知大          (まえかわともひろ)
  • 海の生き物とキノコと豆、乾物が好きです。F1と料理が好きです。UMAや地獄の関係者も好きです。漬物だけは勘弁してください。
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2012.09.24 Mon
北九州出張。
ktko1.jpg
「まとめ*図書館的人生」のキャンペーンで北九州は小倉に着陸。
タイミングよく「劇トツ」というイベントがあったので、前乗りして観劇することにした。

「劇トツ」は北九州芸術劇場が企画したイベントで、九州の劇団が集まり短編作品を競うもの。
条件は上演時間20分・俳優3人、素舞台。九州全土から5劇団が選ばれた。

九州の劇団を観るのは初めて。でも最近九州の演劇シーンが面白いとは聞いていた。
演劇誌の記事でも、新しい劇団がどんどん出てきてるとか、あまり東京を意識せず九州に根ざした活動をしているとか、なにかと興味深いのだ。(日本の演劇は東京に異常なほど集中してるのです)

↓上演順に参加劇団を。結果的に年齢順になったらしい。
劇団ブルーエゴナク(北九州)
非・売れ線系ビーナス(福岡)
劇団ぎゃ。(福岡)
ゼロソー(熊本)
F's Company(長崎)

で、観た。
5団体、作風がかぶることもなく、硬軟と上演順のメリハリも効いており一本のオムニバスとしてまとまっていた。
二時間あっという間。面白かった。
どれも面白かったが、これには審査がある。投票しなくてはならない。観客一人2票、審査員二名が各25票。
審査員は佃典彦さんと、池田美樹さん。お二人が講評している間に集計が進む。

ちなみに優勝団体は「劇王」という短編演劇の全国大会に九州代表として参戦することになる。
佃典彦さんはその「劇王」の発起人なのだ。

九州のベテラン劇団「飛ぶ劇場」の代表でもある司会の泊さんが「劇王は審査が厳しくて講評もボロクソ言われるから覚悟してください」と佃さんにふると、
「いや、べつに、なんか、ボロクソ言う感じじゃないんだけど・・・」
つまり普通に面白かったってことなんだね、やっぱ。

たまたま居ただけの私は特別ゲストとして紹介され、ちゃっかり宣伝までさせていただきました。
一度に九州の劇団を五つも観れたのはラッキーだった。
九州の演劇、懐深いわ。
優勝はF's Company(長崎)
ktk02.jpg
おめでとうございます。

北九州は確か4回目くらいだが、「資さんうどん」を食べたことないと言ったら「馬鹿か?」と言われた。
地元のソウルフード、資さんうどん。
メニューの多さに興奮してパニクって、過呼吸気味になってやばかった。
こういう時は一番人気だ。
肉うどんゴボ天のせ。
ktk03.jpg
ああ〜、はい。素晴らしいわ。




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2012.07.23 Mon
暗いところからやってくる
KAATこどもとおとなのためのお芝居
「暗いところからやってくる」
http://www.kaat.jp/pf/kuraitokorokara.html
昨日は子供たちを招いてのプレビュー公演だった。

対象年齢は小学生から。
低学年の子が多かったようだ。
みんな最後まで集中をきらさず食い入るように見ていた。
つまらない時大人は寝るが、子供は騒ぐ。
爆睡する大人と大暴れする子供、そんな客席になったら悲劇だ。
子供は大人と違って容赦ないので、こちらもいつも以上に慎重になる。
物語の全てを理解できるのは、4年生くらいからかなぁと思っていたが、みんな結構分かってて嬉しかった。
「子供ナメんな」と私も子供の頃ことあるごとに思ったが、恐れ入りました。
大人になると、自分が子供だった頃を忘れがちになり、抽象化理想化された子供像を自分の中に持つようになる。
子供が無邪気と思ってる大人は無邪気だ。
子供らしくしなさいと言われても、その命令に背くのが子供の本義だし、大人しくしろ、という命令はあまりに子供じみてる。
子供とはこういうものだ。そんな存在しない子供に合わせて何かをしても、大抵は的外れになる。
子供の頃、そういう先生や大人に「分かってねぇなぁ」と感じたし、
自分を子供扱いしない本当の言葉で話しかけてくる大人は、「信用できる」と感じた。
それは物語などフィクションの世界でも同じだった。
そんなことをいちいち思い出しながら書いた。

「信用できる」本当の言葉とは、ま言葉自体もそうだか、問題は態度だ。
言葉の扱いにまだ長けていない子供の頃は、「態度」へのセンサーの方がよく機能していたように思う。
何を言うかよりも、それを言ってる時、その人がどんな感じなのか、それを見ている。
言葉で褒められても、「お前なんかどうでもいい」とメッセージを受信したり、
あの先生には怒られてもそんなにムカつかない、とか。
この映画、めちゃくちゃだし全然意味分かんないけどとにかくスゲェ気合いだ、コイツ本気だ、という方が記憶に残っている。
本気で気合入れれば伝わる、なんて思っていないが、とにかく思ってないことは言葉にしても伝わらない。

何をどう言うか。
何は台本だ。どう言うかは演出だ。
台本の時点では、小学生低学年にはやや難しいか、と思った。
でも言葉、つまり論理は理解出来なかったとしても、楽しめる工夫はある。
言い方が面白ければ楽しめるので、飽きさせない工夫を演出でしなくてはならない。
それも物語に沿ったかたちで。定期的に一発ギャグを入れるような下品な真似はできない。
(でもウンコとか言うとウケるんだよなぁ……実際使ってるし)
演出、俳優、スタッフ、皆で美しいバランスを考えた。
昨日のプレビューの反応だと、なんとか物語の最後まで子供たちを連れていけたと思う。
終演後、演出の小川さんが子供たちと質疑応答。面白かったし、ちゃんと怖かったらしい。
沢山のフィードバックがあった。

言葉に分からない部分があっても、登場人物の感情は伝わってくる。
主人公の感じる恐怖を、子供たちがちゃんと共感してくれていて、本当に嬉しかった。
それを表現したかったのであり、細部はそれを補強するための情報にすぎない。
そこら辺は理屈がないと納得しない大人向けの部分でもある。

今回、お化け屋敷的な「怖さ」の演出もあるが、大切にしたかったのは主人公(中学生)の感じる、もっと内面的な「怖さ」だ。
大きなものを抱えて孤独になっていくような恐怖。
お化けよりももっともっと怖いものが、これからの人生、キミたちを待ち構えている、なんて言う気はないが、くれぐれも大人の皆さま、教訓的なメッセージを引出して「はい分かった」とタンスの奥に放り込むような見方はしないでほしいと願う。
教訓も深いテーマもありませんよ、なんせこれは「子供のためのお芝居」なんですから、大人の皆さま安心して観に来てください。
もちろん、子供にはまったく違うことを言いますけど。

ちなみに昨日はプレビューなので、個人的に知り合いの子供で、未就学児の子に見てもらったが、十分楽しめたようだ。
なので小学生低学年でも大丈夫。ぜひぜひ、お子さんを連れて観に来ていただきたい。
(本番は未就学児不可となっています、申し訳ありません)

IMG_0758.jpg
終演後、子供たちと舞台上で。
まだ初日まで数日あるので、さらに良くなるので楽しみだ。



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2012.05.20 Sun
feat.小川絵梨子 MISSION +KAAT
ミッション始まっております。
今回はオーディションワークショップを経ての俳優、演出家に小川さんを招き、台本もワークショップで作るという、いつもとはかなり違うプロセスで出来上がった作品。
やっぱりいつもとはちょっと違った味わいになっています。
作品はもちろんだが、その辺りも楽しんでもらえると嬉しいです。

さて、東京公演もまだ半分終わったばかり。
俳優と演出家はまだまだ作品をブラッシュアップさせていくことでしょう。
そんな中、先日KAAT(神奈川芸術劇場)の記者会見に出席してきた。
次回作品はKAATの主催で作るこども向けのお芝居で、そのお芝居も、作が私で演出が小川絵梨子さん。2回連続のコンビです。

KAATキッズプログラム
こどもとおとなのためのお芝居
「暗いところからやってくる」

あえて言うけど、暗いところって、怖いよ。暗くてよく見えなくてその暗闇からなんか怖いものが出てきそうで、もう本当に恐ろしい。というまぁ私の大好きな感じの話です。
企画名からして、大人も楽しめるというのが条件。
でも子供の時見て、今でも強烈に記憶に残ってるのは、いま見ても十分面白いし、全然子供向けじゃなかったりする。子供時代の自分も、子供向けの物語に、子供っぽいぜ、と感じていたし、子供だましじゃないものに引かれていたように思う。再放送で見たウルトラセブンなんていい例。大人が見て「これ、子供にゃ分かんねーよ」とか「これ子供に見せちゃ駄目だろ」とツッコミたくなるような作品を、実は子供は求めていたりする。もちろん、だからってそんな作品ばかりじゃ駄目で、いわゆるちゃんとした子供用エンタメの中に、時々その手の作品が紛れ込むから、効果を発揮するのであって。
ヤバい物に出会ってしまった、という冒険感覚が日常から大分失われてしまった現状で、セーフティな子供番組の中にそういうのが紛れ込んでいると、子供は敏感にその何かがむき出しになっている肌触りを感じてしまうんだな。大人もそこにある何かを子供に見せていいのか躊躇ってしまう。本当のことは子供に教えるべきではない、と大人は思っているので、そう感じるんだと思う。まあ、そんな作品になればいいと思う。子供は真実に耐えられない、と思ってるのは大人だけなんだよな。国民がパニックになるのを恐れて発表しなかった、ていうのと似てる。ていうか同じか。つまり大人の過保護はいいことなし。子供は大人が思ってるほどバカじゃなく、自分で考えて生きている。子供向け、とした時点で嘘が始まるし、子供は間違いなくそっぽ向く。

kaat01.jpg
会見風景。

kaat02.jpg
芸術監督の宮本亜門さん、ダンスのためのダンス作品を発表する小野寺修二さんと一緒に撮影しました。

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2012.04.24 Tue
文学2012 鬼の頭
217642-2.png

文学2012
編者: 日本文藝家協会
2011年の短篇の集大成 
18人の作家が表現する文学多様性
河野多惠子/田中慎弥/楊逸/穂田川洋山/木下古栗/前川知大/松田青子/赤染晶子/伊坂幸太郎/森内俊雄/よしもとばなな/古井由吉/佐川光晴/荻世いをら/綿矢りさ/岡田利規/高村 薫/木村友祐
--------

去年「群像」に書いた短編小説「鬼の頭」がこの本に収録されました。
どうですか、この豪華な顔ぶれ。
何かの手違いかと思いましたね、正直。光栄です。

この「鬼の頭」という作品は、イキウメの図書館Ⅲの時期に書いていました。
図書館Ⅲで「人生という、死に至る病に効果あり」という作品があって、それは健康マニアの男が不老不死を目指して吸血鬼になってしまう話です。
ヴァンパイアものは好きで何回も作品にしているんですが、こっちもいいなぁと書いたのが「鬼の頭」でした。
妖怪やモンスターは書いていて楽しい。次は何にしようか。








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2012.03.16 Fri
イキウメのワーク・イン・プログレス2012
イキウメのワーク イン プログレス 2012
というのをやったので、そのレポートであります。
かなり長いので覚悟してね。



work in progress とは
制作途中の作品を公開し、観客の視点などを取り入れつつ、ワークショップを繰り返しながら作品を発展させていくことらしいが、定義はそれほどはっきりしていない。
「作業中」と一言で言ったほうがしっくりくる気がする。

世田谷パブリックシアターの「劇作家の作業場」という企画があって、これは劇作家に稽古場を自由に使わせて、何ができるかという企画(←間違ってたら言って)。
基本的に稽古場は演出家と俳優がいて、台本を使って稽古をする。劇作家の仕事はその前に、一人篭ってセコセコ台本を書くもの。その劇作家に広い稽古場を渡すのである。好きに使っていいよ、と。
ドッチボールができる程のスタジオの中央に机を置き、一人キーボードを叩くのもシュールでいいが、さすがに怒られそうなので、もう少し有意義に使わせてもらうことにした。

5月の劇団公演目指して、俳優たちと稽古場で台本を立ち上げよう、
というのがイキウメのワーク イン プログレス 2012なのだ。

次回のイキウメは劇団公演だが、演出家の小川絵梨子さんに演出をお任せする。このこともタイミングが良かった。私は劇作家に専念できる。(まぁ一応劇団主宰でもあるから稽古始まっても稽古場をうろうろしてるとは思うけど。)

メンバーは、
劇作家(私)と演出家(小川さん)、劇団員俳優8人。とオーディションで選ばれた5人の俳優。
それとイキウメ文芸部である。

イキウメ文芸部とは何か。
もともと私のドラマドクター(物語つくるアドバイザーみたいな人、意見交換したり、褒めてその気にさせてくれたりする人、これも定義曖昧)みたいになってた結木という男がいて、彼のポジションに名前を付けようと思って出来た部署である。
前回の「太陽」からもう一人、若手の作演出家の春謡漁介というのが加わって、パンフにも文芸部とクレジットされるようになった。芸人としてネタを作るという側面もある俳優部安井も「私も裏部員として入部させてくれ」と更に増える。
昔は何となくご意見番的な感じで、打ち合わせも緩かったんだが、文芸部なんて名前を付けることで公式感が出た。部員も増えると議論も活発に。そういうわけで「太陽」の時は文芸部がとても上手く機能した。一人頭を抱えて悩むのではなく、みんなの前で頭の中身をぶちまけるのだ。

それではと、オーディション情報に、俳優の下に「文芸部員募集」といれてみた。
思った以上に沢山の応募があったのは嬉しい驚きだった。
年齢も10代~50代まで幅広く、志向も演劇、小説、映画、海洋生物と多岐に渡った。
選考を経て、三人の勇者が仲間に加わる。
小説家志望の高橋君、現役バリバリのドラマ脚本家宮村さん、イギリスで4年間ドラマターグ(*)として活動していた中田さん、という全く出自の違う3人である。

(*)ドラマドクターよりも全体的に演劇制作に関わるアドバイザー。本人いわく「うっかり八兵衛」ポジション。日本演劇界でも認知されつつあるけど、一般的には知られてないし、まだ職業として成立してるとはいえないのが残念なところ。

もとからいた結木も専門は音楽だったりするので、バラエティ豊かな文芸部となった。

wip001.jpg
春謡、中田博士、宮村さん、高橋くん、結木

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大石治人さん、太田緑ロランスさん、木下三枝子さん、渡邊亮さん、井上裕朗さん

では、WIP(Work In Progress) 始めますか。

■WIP1日目

取り敢えず私がタイトルとコンセプトを持ってくる。A4の紙2枚に、何となく思ってることを書いただけ。

タイトルは「ミッション」。missionというのはキリスト教の伝導という意味があって、神から与えられた使命、というニュアンスがある。

警察やヒーローって事件が起きた後に活躍するけど、事件が起きないようにする予防というのが一番偉いよね、そういう未然に防ぐの大切だよね、でも事件が起きないわけだから、物語的には地味だよね。いや、でもそういう誰にも褒められない人たち格好よくない?

紙を見ながら考えながら、そんなことを喋る。
ここからどんな物語が産まれるか。俳優たちと一緒に考えていく。
でも、俳優にいきなり「アイデア出せや」というのも無理な話だし、
初対面の人も多いわけだし、
まずはまずは、みんなが意見を言いやすいように、フランクな雰囲気を作ることが大切だ。

というわけで、演出家小川さんの仕切りで、ゲームをして遊ぶ。
鬼ごっこ、ジェスチャーゲーム、ドッチボールなど。
体を動かすはめになるとは思ってもみなかった文芸部の皆さんごめんなさい。もちろん私も参加して3時間、筋肉痛になるほど遊ぶ。

さて、体から十分な刺激を脳に与えたし、コンセプトから何か考えてみますか。
基本的には、俳優たちから出てきた材料を、文芸部で検証してまとめるという流れ。
最初にやったのは、マインドマップを使って思考を巡らせてみるということ。
(マインドマップは思考整理法。ググればいくらでも出てきます)
コンセプトの文章から、気になった単語をピックアップしてもらい、投票数の多かったのを中心に置いて、マインドマップを展開してもらう。
俳優は2チームに別れ、全員がマーカーを持って、ホワイトボードに書きこんでいく。時間は15分。

マインドマップには慣れが必要で、まぁ最初は練習だ。
俳優は当然物語を作ることに慣れてはいないので、考えるツールが必要。
マインドマップは私も普段から使っているが、みんなでやると更に楽しいものです。
みんなに伝えたのは、
「成果を残そうと思わない」で「遊ぶ」ことが大切ということ。
そして出てきたアイデアを否定しない。

テーマを変えて何回もやってみる。
段々なれてきて、15分経たずに2枚のホワイトボードが言葉で埋め尽くされる。
「儀式」というテーマでやったあと、2チームのボードを交換して、それぞれのボードに出てきた言葉を3つ使って、新しい儀式を創りだしてください、というお題をだした。

出来上がった2つの儀式。
チーム1
どこかの国の国境付近で、伝染病が流行ると行われる儀式。まずは、伝染病の死体を白骨化させ、その死体に綿飴を詰める。それを担ぐと、大勢で「嫌だ!嫌だ!」と叫びながら国境を往復する。綿飴が消えた時点で儀式は終わり、病原体が消えたとする。死体はその時点での国が引き取る。
チーム2
三年に一度行われる儀式。青梅樹海のどこかにあると言われている、村の神「ベロ出しチョンマ」の井戸を、選ばれし鬱病の処女が探し出す。制限時間内に見つけないと、村の処女たちが爆死する。

どちらも味わい深い。この荒唐無稽さは狙って出てくるものではない。

更にマインドマップをし、出てきた言葉を3つ選び、それを題材にエチュード(即興芝居)をやってもらう。
チーム1:督促の電話・熱湯・がんじがらめ
チーム2:思春期・無言の行・不時着

それぞれ面白かった。共通していたのは、異物として奇行をする者がいて、それを異物と認めず、なんとかして日常に取り込もうとする人達が現れたこと。

俳優部は終了。今日見たものを材料にして文芸部と私と小川さんでミーティング。
エチュードから作品のテーマを深める要素をピックアップし、次回のWIPの土台にする。

wip004.jpg


■WIP2日目(中5日)

最初はゲームで遊ぶ。
そしてマインドマップでテーマの掘り下げと、具体的なキーワード収集。
抽象的なテーマを深めつつ、物語の材料(シチュエーションや登場人物)となる具体的な言葉を集めていくのだ。

テーマを浮き立たせることを期待して、エチュードのお題を決める。

1・本気であることを証明する方法
2・理不尽なお願い
3・理由を言えない旅立ち

前日の反省を踏まえ、グループの人数を少なくした。
二日目にして、俳優たちに慣れが見える。
マインドマップは無言であっという間にボードを埋めたし、エチュードもリラックスしてできている。
じっと見ていた文芸部も、自然に感想を俳優たちにむかって発言しはじめる。
稽古場全体で、考えること、意見を言うことに慣れてきたようだ。環境が整ってきたところで、次回はもう少し具体的な要素を手に入れたい。

■WIP3日目(中5日)

エチュードから始める。
テーマに絡んだシチュエーションを前回より詳しく指定した。

1・師匠と弟子、その孫弟子
2・友達の万引きを見つけた
3・会社の不正を両親に報告
4・鶴の恩返し

エチュードは途中で何度が止め、設定や条件を追加して展開させていく。
どれも下手な芝居みるより面白かったんじゃないか。
シチュエーションの中で登場人物がいきいきしてきた。
いくつかの得難いキャラクターが提示された。ストックする。

俳優たちの即興の言葉は、初日に渡したコンセプトを反映しているように思える。聞いてみると、さほど意識していないそうだ。見る側が関連付けて見ているだけなのか。
各エチュードから、同じようなテーマが浮かび上がる。
「理想の押し付け」「主観的世界の個人差」など。

具体的なキャラクターや関係性としては、全てを受け入れる空っぽの師匠、兄と弟の相克、理想を追う父子と現実を見る母、などを収穫した。
ある家族と親戚の叔父さん、叔父さんの師匠という具体的な人間関係をたたき台にすることに決める。

抽象的なテーマと具体的なドラマのマッチングが重要だ。
何がどこで語られるのか。

文芸部でヘトヘトになるまで議論する。
13時から21時までとっているが、材料が集まるにつれ、文芸部ミーティング時間の比率が多くなってきた。
今日始めた時にはまだ存在しなかったかった物語が、少し姿を見せ始めた。

wip005.jpg
一番手前が小川さん、みんな後ろ姿やんけ

■WIP4日目(中2日)

6ページの台本を書いてきた。
家族に大きな影響を与えるキーパーソン「叔父さん」に私がインタビューした内容だ。
叔父さんと父の過去と、叔父さんがなぜ今のような世界観を手に入れたのかが分かる。叔父さんの世界観とはつまり、物語の重要な設定である。

配役を変え、何度か読みあわせをする。
気になったところを言ってもらう。

軸になる人間関係は兄弟姉妹、親と子なので、俳優の個人的な経験をリサーチする。
というのも、前回の文芸部ミーティングでは、男5人女2人の中で最大勢力4人を誇った「次男」の意見が幅をきかせていたからだ。
長男長女7、次男次女7、三女1、一人っ子2というバランスでディスカッション、というか雑談。
話せる範囲で言ってくれ、としたが、
兄弟姉妹の話にくらべ、父母とのエピソードは皆それほど多くを語ろうとしなかった。そういうものか。

エチュードはせず、俳優部は早々終了。
文芸部のミーティングにする。
連日、話し合いの密度が濃い。小川さんも毎日最後まで議論に参加してくれる。いいメンバーが集まったものだと、しみじみ嬉しく思う。
プロフェッショナルなクリエイティブチーム、というよりは、「部活」と位置付けたのが正解だったのかもしれない。「部活」という言葉を使ったのは宮村さんだが、実際は彼女が最もプロフェッショナルだ。
最古参の結木いわく「存在しなかった僕の青春が、ここにはあるような気がします」
高橋君は「帰り道、仕事の後とは違う圧倒的な満足感が。仕事の時の僕は死んでいます」なんて言う。
楽しんでくれて満足だが、大げさすぎないか。
いや、クリエイティブな現場になっているということだろう。
中田さんも自分の経験が何処で活かせるのか、日本の演劇界に自分の需要はあるのかと考えていたらしいが、あるよ、大丈夫だよ。
一番若い漁介は着いて行くのがやっとで、脳が痛いそうだが、安心しろ、成長痛だ。

たたき台の人間関係で、ダイアローグを書いてくることにした。

■WIP5日目(ここから連日)

しかし、書けなかった。
材料が足りない気がした。もっと具体的な材料が必要だ。
エチュードに戻る。

エチュードは人物相関図から、総当り戦ダイアローグである。
兄弟を中心に、その父と母、叔父と叔母がいる。
母と叔母から始める。母が叔母に苦情を言いに行くエチュード。
苦情の内容は、弟に叔父の悪影響が見られるというもの。
ここからスタートして、登場人物が次にどういう行動にでるか、というのを考えつつ、時系列で繋げていった。アクションが次のアクションを引き出すように、注意深くみていく。
母は父に相談し兄を呼び出す、叔母は叔父に詰め寄り、叔父はカミングアウトする、兄は弟に確認する。
自然と展開されていく状況。キャラクターにもリアリティが増している。
ここまでの4日間で、設定や世界観、私が何となく進めたい物語の方向が、俳優に血肉化されている。そうでなければこう上手くはいかない。

俳優部は終了。大きな収穫があった。
物語が見えてきた。
文芸部で、より具体的なことを決め込んだ。
兄弟の関係、コンプレックス、家業、舞台となる街の規模、名前。設定そのものの詳細(免疫細胞のように機能する人間、衝動という名の命令、callingというシステム……意味不明でしょうがあえて書きますよ。)

しかしまだ、大状況が見つからない。登場人物全員に関係ある大きな状況である。
これがないと「うねり」が生まれない。
うーん。議論が停滞したらさくっと止めて帰る。そういうのも大事。
さて、ビールでもどうかね。

明日は決め込んだ設定を反映させて、再び時系列でエチュードだ。

■WIP6日目

昨日、あまり深まらなかった弟を中心にエチュードをする。
配役を変え、相手を変え、やってもらう。
こうしてエチュードで作品を作っていくと、俳優たちは自分で自分の役を創出していく。
つまり、残酷な言い方になるが、自分の席を作り出せなかった者は、役が無くなっていく。
とはいえこれは技術云々というよりは、柄(がら)の問題である。
友情をテーマにして出てきたシチュエーションが高校サッカー部で、そこでの先輩後輩の成長物語となった時、その物語が要請する登場人物があるはずだ。三十路の役者が10人いても困る。そういうことだ。

昨日文芸部で決めた設定を告げると、俳優たちが更に自信を持った演技をするようになった。即興で喋ったとは思えない言葉が、文芸部をうならせる。

物語は、弟の人生を変えてしまう叔父と父、つまりもう一つの兄弟が対峙するところへ向かった。
私が最初に書いてきた台本で、若い頃のこの二人は会話しているが、エチュードではあえてぶつけないでいた。
父と兄、母と兄、兄と弟、叔父と兄など、これらのダイアローグで語られた事態が、稽古場には積み重なっていて、稽古場の誰もが、物語の先を知りたがるように、父と叔父の会話を切望した。自然の流れだった。

この父と叔父のエチュードは、素晴らしいものになった。
俳優はエチュードで語られた断片を拾い集め、余白を埋め、見事な物語を紡いでいた。
見事なシーンだった。
台本があると、当然なぞるという行為からスタートしなくてはならない。共演者を使って、ともに言葉に血を通わせていく。そうしてやっと舞台上に生きた会話が立ち上がる。
しかしこれはエチュードである。俳優が自分で言葉をチョイスしている。いまそこで生まれた言葉で、完全に生きている。しかもそれはその場しのぎの間埋めの言葉ではなく、キャラクターと関係性、歴史をしっかり理解した上で編み出された言葉だ。それは作家が編み出す言葉と変わらない。
拍手を贈る。
これを稽古場のみんなが目撃したことで、台本を書くハードルがあがった。養殖が、天然モノに勝てるだろうか。

文芸部ミーティング。
昨日と今日のエチュードを整理して時系列で並べてみる。
最後に集約された父と叔父のエチュードを到達点として、このまま物語のプロットの半分は出来たようにみえる。
もちろんここからシーンを厳選し、構成を考えていくので、変わる部分もあるのだが。

にしてもだ。
最終日を前にして、正直これ程まとまるとは思ってもみなかった。
ここまでエチュードで具体的に物語が出来上がっていくことに驚いた。
俳優たちに感謝である。

このWIP、私が台本の断片を持ってきて、それを俳優たちと修正していく作業だと、なんとなく思っていたが、そんなチマチマした作業ではなかった。滝の水を逆流させるような、とても躍動的な作業であった。同時に、紙ふうせんを下に落とさない為に、みんなが協力して息を吹き上げるように、霧散しそうなアイデアを丁寧に丁寧に扱った。
この2日間は、いままでの積み上げが一気に花開いたような進展だった。

大状況も見えてきた。
明日は今日やれなかった細かい状況のエチュードをやると決め、解散。

■WIP7日目、最終日

最終日は、ギャラリーが入る。世田谷パブリックシアターのプロデューサーやスタッフ、演劇関係者など20名以上が稽古場で見学するのだ。
「劇作家の作業場」という企画が、どのように機能したか、確認したいのであろう。

何を見せたらいいのか。エチュードだけ見せても流れが分からないだろうし、
「とても機能した。感謝します!」と言って終わりにするわけにもいかない。

昨日の時点で物語の大きな流れが見えていたので、そこまでの5~6のシーンを繋げて見せれば、ドラマとして楽しんでもらえるだろうか。
でも同じ俳優に同じ設定でもう一度エチュードしてくれ、というのは酷だ。自分の言った言葉をなぞるのは気持ちがいいものではない。逆に同じことを言うのを避ける意識も不自然不必要な要素になる。どの道、昨日一昨日のような素晴らしいものにはならんだろう。

だったらと、今までの流れで最終日もやらせてもらおう。時間いっぱい利用させていただく。それが先方も本意のはず。
一応今まで6日間の流れを、レジュメを配って見学者に解説。物語内容について話すのは難しいので、何をしたか、を中心にお伝えする。
内容については本番を観ていただくことにし、詳細はこのブログを見てください、ということにしよう。

じゃ、またエチュードしましょうか。

幾つかシーンをやったが、さほど新しい流れは生まれなかった。
既に大きな流れは作り終えた、ディテールをつめる段階にあるのかもしれない。
私の頭にも書きたいシーンが浮かんでいる。
無理矢理エチュードを続ける意味はなさそうだったので、これにてWIP終了。
大きな成果があった。お疲れさま、俳優部。お疲れさま、文芸部と小川さん。
4月初旬から本稽古開始。
私はこれからこの台本を完成させないといけない。
半分出来たようなものだけど、みんなの力が詰まったこの物語をまとめるのはなかなかのプレッシャーだ。
「最終的には前川さんの作品なんだから、まったく別の作品になってもいいんだよ」と宮村さんは言ってくれた。その通りだと思う。でも、今の状態でもかなり面白いんだよね。
大事にしつつ縛られず、書いていこうと思う。

数日後には劇団先行予約も始まります。お楽しみに。

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